2024年5月 働く電大人 福嶋 圭次郎さん

学園広報誌「TDU Agora」2024年5月号から『働く電大人』福嶋 圭次郎さんをご紹介します

岩手から世界に響け ~南部鉄器エフェクターが世界を沸かす~

合同会社福嶋圭次郎
(楽器メーカー kgr harmony)
代表 福嶋 圭次郎さん
2009年3月 工学部第一部 電子工学科 卒業

私の会社は岩手県奥州市で主にエレキギターやベースなどに使う「エフェクター」という音色を電気的に変化させる機器を製作しています。特に、伝統工芸品の「南部鉄器」をエフェクターの筐体に用いた「南部鉄器エフェクター」が弊社の特徴のひとつです。

南部鉄器エフェクター

私は中高生時代に楽器を演奏していましたが、一人で機材をいじっているうちにバンドで音を合わせるよりも機材への興味が高まりました。高校3年生の進路を迷っている際、楽器系の雑誌に「エフェクターを作ろう」という記事を発見し、試しに作ってみました。作ったエフェクターはまともに音が出ませんでしたが、製作中はあっという間に時間が過ぎ、もっとエフェクターを作ってみたいと思うようになり、東京電機大学の工学部電子工学科に入学しました。

当時、校舎は東京・神田のビル群の中にあり、秋葉原まで徒歩で行ける距離だったこともあり、電気街に通いつめ電子パーツを眺めたり、エフェクターの部品を集めたりしました。大学の講義は、エフェクターに関連していそうなことならなんでも受講し、その甲斐あって入学当時には全くわからなかった回路図が理解できるようになり、自分で回路設計ができるようになりました。

あまり真面目ではない学生でしたが、「何者かになってやる」という思いだけはあり、ふらふらしながらもずっとエフェクターの製作は続けていました。3年生後半の春休み、何故か「自分で作ったエフェクターをアメリカ・LAに売りに行く!」と思い立ち、就活を始めた同学年の友人達を横目に、モヒカンヘアーでアメリカに渡りました。思い切って入ったハリウッドにある楽器店で、カンペ片手に「私の作ったエフェクターを試してください」と言うと店員らは喜んでエフェクターを試し、購入してくれました。この経験が私の進路を決定づけました。

株式会社 及富

エフェクターの製作を続け、独自の研究を進める中、作られる音色はさまざまな要素で変化することに気づきました。エフェクターの筐体である金属製の箱にも何か特徴を持たせたいと思い考えていたところ「南部鉄器」を知り、これでエフェクターの筐体を作ったら特徴のあるものが作れるのではないかと考えました。そうして地元の横浜から岩手県に移住し、南部鉄器工房 及おい富とみさんに直談判し、製作協力を得て「南部鉄器エフェクター」の製品開発が始まりました。

今では、日本のみならずアメリカなど海外の音楽ファンにも注目され始め、大手海外ブランドとのコラボをするまでに至りました。そして、今年2024年にはアメリカ・アナハイムで行われた世界最大級の楽器展示会「NAMM SHOW」に参加しました。この展示会には、南部鉄器エフェクターと共にもう1つの岩手県の伝統工芸品である「岩谷堂箪笥」を用いた「岩谷堂アンプ」も展示し、日本文化を取り入れた楽器ブランドとして世界にアピールすることができました。

岩谷堂アンプ

今後もエフェクターで「世界を沸かす!!」をスローガンに活動を続けていきます。

学園広報誌「TDU Agora」Vol.75(2024年5月号) 働く電大人より転載

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