2023年11月 3Dプリンタによるミニ四駆のリバースエンジニアリング

学園広報誌「TDU Agora」2023年11月号から「特集」、3Dプリンタによるミニ四駆のリバースエンジニアリングをご紹介します

令和5年度 学校法人東京電機大学学術振興基金『教育賞』受賞

3Dプリンタによるミニ四駆のリバースエンジニアリング ~デザイン思考におけるプロトタイピングを習得するために~

勝本 雄一朗 准教授
(理工学部 情報システムデザイン学系)
木村 勉、中谷 隆之、阿部 美穂
(ものづくりセンター)

※学校法人東京電機大学学術振興基金『教育賞』・『教育奨励賞』は、本学における独創性が豊かな教育、特色ある教育、顕著な教育成果をあげた教科書、教育に関する独創的又は特色ある研究成果等を対象とし、教員等の業績を表彰しています。平成4年度より開始し、今年度で31回目を迎えました。

この取り組みは、教員と職員(ものづくりセンター)が協働し、デザイン思考におけるプロトタイピングを実践する授業です。「ミニ四駆を3Dプリンタでリバースエンジニアリングし、サーキットでの走行タイプを競う」という課題を設定し、走行タイムを短縮するためにプロトタイピングを繰り返します。
ミニ四駆は、株式会社タミヤから販売されている小型の自動車模型で、1980年代より市販が開始され、幾度かのブームを経て、現在も世界中にファンを持っています。一方で、近年は子供の遊びの主流がゲームへと移行し、大多数の学生はミニ四駆などの「動く模型を作る遊び」を経験していません。彼らにとって3Dプリンタでミニ四駆を作り直すことは、多くの試行錯誤が必要とされる課題です。

実施科目と対象者
●実施科目
2022年度後期「情報デザイン演習Ⅱ」理工学部情報システムデザイン学系 2年生配当科目
●対象者
上記科目履修者より10名を選抜(ミニ四駆の制作と3Dプリンタの使用について未経験の学生)
1年生前期・造形デザイン入門にてCAD(Fusion 360)を習得済み

教材とレギュレーション
●配布教材
1/32 ミニ四駆PROシリーズ (MAシャーシ、ギア比 4:1) 各チーム1台アルカリ乾電池、ラッカー塗料、金属ハトメなど
●使用する3Dプリンタ
Zortrax M200 Plus および M300 Plus(ものづくりセンター鳩山、ABSフィラメント)
●課題のレギュレーション
ボディ、シャーシ、ホイール、ローラなど樹脂部品の部品を3Dプリンタで制作するモーター、タイヤ、ギア、シャフト、接点金具などの部品はキットを流用してもよい
ボディは塗装すること
学期末に走行タイムを計測する

履修者10名を2名ずつ5組のチームに編成し、各チームにミニ四駆のキットを配布。
サーキットでのタイムトライアルを実施し、座学では、3Dプリンタの仕組みと造形物の特徴を解説。
3Dプリンタの特性をもとにCADで設計する方法、効率的なスライサーの利用法を実演しました。

3Dプリンタを利用した立体物の出力では、コンピュータ上の設計と実際の出力結果を比較し、大きさや形状の差異を確認。
差異を補正する手段として、手工具と接着剤の使用方法を説明。

各チームの作業の進捗は、Web上の情報共有システムによって報告。
自チームの状況を他チームに共有し、プロトタイピングの活性化を図りました。

シャーシから試作を開始し、プレ計測会にてサーキットでのタイムを計測。
この時点で完走できたのは2チーム、ボディまで制作できたチームは1チームでした。
走行できない理由として、駆動系のクリアランスが適切でないこと、走行時の振動で電源スイッチが誤作動してしまうことが挙げられました。

その後、ボディの試作が行われ、試行錯誤が繰り返されました。
学生たちは10回以上のプロトタイピングを行い、学期末には夜半まで試走が行われました。

計測会では、ものづくりセンター鳩山にサーキットを敷設し、チームごとにタイムを計測。
プレ計測会とは異なり、全チームが完走。5チームのうち2チームは、30周のタイムが1分を切り、市販のキットと遜色のないタイムとなりました。

計測会の終了後は、キャンパスの中庭にて祝勝会を行い、スパークリングジュースを手に、試行錯誤の成果を労い合いました。
履修した学生の過半数は、授業終了後も自発的にものづくりセンターを再訪し、主体的にものづくりを継続しています。

授業を履修した学生からの声

なんとなく面白そうだなと思って希望したデジタルファブリケーションの授業でしたが、チーム制作としても、ものづくりとしてもかなり勉強になりました。特に締め切りを意識し始めた制作の後半は毎日のようにミニ四駆のことを考え、何時間も作業する日もあり大変でしたが、計測会では走行中に部品が飛ぶこともなく最後まで走り切ることができて安心しました。半年間ありがとうございました。本当に楽しかったので、またこういった制作がしたいです。

学園広報誌「TDU Agora」Vol.69(2023年11月号) 特集より転載

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