2021年12月 今月の顔 保倉 明子 教授

2021年12月号から今月の顔 工学部 応用化学科 保倉明子教授をご紹介します

日本分析化学会2021年度女性Analyst賞を受賞

~放射光X線を用いる植物の元素イメージングと微量元素の動態解明~

工学部 応用化学科
大学院先端科学技術研究科委員長
保倉 明子 教授

1997年 東京理科大学大学院理学研究科化学専攻博士課程修了。日本学術振興会、科学技術振興事業団(JST)博士研究員、東京理科大学、早稲田大学を経て、2009年 本学工学部准教授。2013年 工学部教授。2021年より大学院先端科学技術研究科委員長。

2021年9月、公益社団法人 日本分析化学会の女性Analyst賞を受賞しました。日本分析化学会は、理・工・農・医・歯・薬など広い分野の研究者・技術者の約5,500名が参加する、分析化学関係では世界最大の学会です。分析化学は、物質の構造・性質を調べる方法や、物質の検出法・分離法を研究する化学の一分野で、私はX線分光法やプラズマ分光法の応用研究に取り組んでいます。今回の受賞では、植物中微量元素の分布を可視化するために放射光X線マイクロビームを活用する分析法を開発し、その動態解明により多くの新知見を得たことが高く評価されました。受賞対象となった業績は、研究室の学生(学部生、大学院生)や共同研究者との長期にわたる研究成果です。関係者の皆さんに心から感謝しています。

研究の概要

ある種の植物は汚染土壌でも枯死することなく生育し、体内に高濃度の有害元素を蓄積することが見出されています。通常の植物と異なる無毒化機構をもっていることが想定されますが、その詳細を解明するためには、できるだけ植物が生きた状態での機構を調べる必要があります。そこで、非破壊・高感度で植物を計測できる放射光X線分析を適用し、植物体内におけるヒ素やカドミウムなどの有害元素の分布の可視化や化学形態の解明に取り組んできました。得られた知見は、植物を利用する環境浄化技術(ファイトレメディエーション)に資することが期待されます。

放射光施設における測定の様子
X線吸収分光法により、植物に取り込まれたヒ素の化学形態が明らかになった

元素の分布を可視化して、ヒ素の移行を追跡
ヒ素は葉の辺縁部の胞子嚢周辺へ速やかに移行した
X線マイクロビーム:1.5µm×1.5µm

学生へのメッセージ

私の好きなことばを紹介します。

私の研究の推進力は、好奇心です。「科学の花」が咲き、社会に貢献できるなんて、素晴らしいと思いませんか。将来、高度な専門技術者・研究者として社会で活躍するために、本学で多彩な発想を活かして研究を推進する学生が増えることを願っています。

学園広報誌「TDU Agora」Vol.48(2021年12月号) 今月の顔より転載

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