2021年5月 今月の顔 吉田 俊哉 教授

2021年5月号からは 今月の顔から、工学部 吉田俊哉教授をご紹介します

イノベーターはお節介者

工学部 電気電子工学科
吉田 俊哉 教授

1996年 東京電機大学大学院理工学研究科修士課程修了、同年 本学理工学部嘱託助手。 2012年 工学部教授。2020年4月より工学部長・工学部第二部長。博士(工学)。

東京千住キャンパス4号館をバックに

電化製品を分解した少年時代

私が小学校低学年の頃までは、故障したテレビ、ラジオ、洗濯機などの粗大ゴミが道端のゴミ収集所に捨ててありました。電化製品に興味があった私は、下校時、通学路にあるゴミ収集所で面白そうな家電製品を見つけると、友達に手伝ってもらい家まで持ち帰りました。今では想像できない時代ですが、当時、家には、これらが分解された残骸が山のようにあり、さながら昭和の秋葉原のジャンク屋でした。取り出した部品を利用して工作するのですが、当時は電気の知識が乏しく、できることは極めて限定的でした。その後、オーディオの趣味が加わり、機器の自作への思いが募りますが、高校生になってもやはり知識が足りません。そんな思いがあって、本学理工学部の応用電子工学科(当時)に入学したのが、私にとっての工学の始まりです。

工学の学び

この他愛ない動機のおかげで、足りなかった知識が工学の学びで得られる実感がありました。しかし多くの学生さんは、将来を見据えて大学での分野を選択したものの未知の世界に飛び込んだのではないでしょうか。現在進行中の学びが何に役立つのか、将来、社会に貢献できるのかという不安を抱えている方が多いように思えます。大学院修士課程の入学試験における面接で、「知識が足りないので進学してもっと勉強したい」という大学4年生の発言を耳にします。大学で3年以上学んでも何かできるような実感が持てないという思いの表われでしょう。それを払拭しようとする前向きな動機ではありますが、残念ながら猛勉強しても「もの」を創造できるようにはなりません。工学系は活躍するためには基礎から応用までたくさん学ばなければならず、下積みが長い分野です。常に新しい知識を入れ、加えて経験を積み続ける必要があり完成形はありません。ですが、大学で基礎を学んでいれば基本的な道具はすでに整っています。その道具を活かせないことが悶々とさせるのでしょう。

学部長室でのデスクワーク

趣味が責務になり自分事へ

ワープロソフトや表計算ソフトの教本には例題が多数掲載されており、順にこなせばソフトを使えるようになります。しかし例題をこなし終わって技能(道具)が身についても業務ができるようになるわけではありません。逆に、どうしてもやらなければならない業務があれば、技能は未熟でも業務を遂行するでしょうし、一人で解決できなければ他者の力も借りるでしょう。工学もこの技能と同じで、必要に駆られた業務があり、これを自分の責務と思い、自分事にしなければ機能しないのです。私の場合、身勝手にも趣味が責務となり、自分事になっていました。学生時代を振り返ると、趣味のためだけには、当時から工学が機能していました。

イノベーションを起こすには

社会では、外圧によって強制的に自分事にされて仕事をすることが多いのは事実です。しかし大きな成果を生み出す人は、自発的な自分事を見出す能力を持っています。やってみたいと思う事柄(業務)を漠然とでも見つけ、のめり込み、自分がやらねばと自分事に発展できれば、工学が機能してイノベーションを起こすことができます。自発的な自分事は、意識して視野を広くし、身の回りから社会全体まで各所に気を配り、何でも自分事と思ってしまうお節介な気持ちから生まれます。悶々としている方は、趣味のような狭い範囲の自分事にとどまらず、「視野が広い気の利くお節介者」になって自分事の発掘を試みてください。

2020年度 電気システム制御研究室 最終ミーティングでの記念撮影

学園広報誌「TDU Agora」Vol.42(2021年5月号) 今月の顔より転載

◆ご意見、ご感想、情報など是非お寄せください。
【編集・発行】学校法人東京電機大学 総務部企画広報担当
120-8551東京都足立区千住旭町5番 
E-mail:keiei★dendai.ac.jp(★をアットマークに換えてください)

関連コンテンツ

その他のコンテンツ