~現状のSUSや真鍮製医療機器における種々の問題点を解決可能なDLCコーティング技術研究のご紹介~
DLC(ダイヤモンドライクカーボン;非晶質炭素膜)の機械特性および生体適合性を活用した画期的医療デバイスの開発
~現状のSUSや真鍮製医療機器における種々の問題点を解決可能なDLCコーティング技術研究のご紹介~
医療機器、治療機器の多くは、SUS(ステンレス)や真鍮を用いた物がほとんどである。
ただし、生体内に直接挿入する為、以下にあるような問題点が指摘されています。
(1)生体内に挿入する際の摩擦により、痛みや不快感がある。
(2)減菌処理によって、経時の医療機器表面劣化が発生する。
(3)体内の酸による劣化によって、アレルギー物質(主に金属成分)が溶出する。
(4)電気メスの使用時における、感電や火傷のリスクがある。
本研究開発の発端は、医療機器の製造・販売メーカーである(株)ナミキ・メディカルインストゥルメンツから2015年7月に、信用金庫を通じて、医療機器の上記問題点を解決可能な技術の照会があり、大学知財群活用プラットフォーム(略称;PUiP)のWGを開催した中で、平栗先生が研究を行っている「DLCコーティング」を実施する事で解決できる可能性がある・・・という事で、本研究開発が開始されました。
また、2017年に、公益財団法人JKAの研究補助事業として本テーマの研究開発が採択され、本研究を加速化させることが可能となりました。
本研究開発では、(1)生体に対する摩擦の低減効果検証、(2)医療現場を模擬した浸漬試験及び減菌試験環境下による寿命評価、そして(3)感電事故に対する電気絶縁性評価について検討を行い、次に示すように、当初目標に対して良好な評価結果を得ることができました。
左の図に示す通り、SUS材にDLCコーティングした物は、従来品(SUS材)と比べて大幅な摩擦係数低減が図られ、生体内挿入時の痛み低減に寄与できると考えられ、大手医療機関での評価結果でも「生理食塩水で濡らさなくても患者の痛みが小さく非常に良い」との評価結果を得ました。
また、浸漬・減菌試験前後の表面形態観察結果及び元素定量分析結果では、表面からの金属元素の溶出が殆んど見られず、機器の劣化防止にも寄与できることが示されました。
そして、絶縁耐圧試験では、従来品は絶縁性が無いのに対して、大幅な絶縁性の付与という結果が得られ、感電や火傷のリスク低減にも繋がる結果が得られました。
今回の研究開発から得られたDLCコーティングの機械特性および生体適合性より、DLCコーティングは、各種医療機器や治療機器ばかりでなく、各種科学機器への応用展開を図ることが可能であると考えます。
◆医療機関からの更なる改良要請に対する検討
◆医療機器として要求される価格レベルに合致可能なDLCコーティングコストの低減等をコーティングメーカーとも連携を図りながら実現することを考えています。合わせて、DLCコーティングの優れた特徴を大いにPRすることによって、本用途だけではなく、各種用途に展開する為の研究開発を推進する予定であります。
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