情報通信 現在のインターネットの限界を超えて、あらゆる「ひと」「もの」「情報」を安心・安全・簡単につなげられる、次世代のネットワーク方式

ココがポイント

小川先生は、現在のインターネットの限界を超えて、あらゆる「ひと」「もの」「情報」を安心・安全・簡単につなげられる、次世代のネットワーク方式とサービスを研究しています。

研究目的・背景

あらゆるモノがネットワークにつながり、リアルタイムで情報をやり取りするIoTにより集積されたデータを分析し、データの規則性を見つけて実際に機械を制御するAIが注目されています。
しかし、ネットワークを経由するIoTでは、例えば、発信者をなりすました「振込詐欺」や、Webサーバへの「DoS攻撃」を根本的に不可能とする通信方法、人口の100倍以上の個数のマシン端末を経済的にインターネットに収容できるネットワーク方式など、解決すべき問題はまだたくさんあります。
情報システム工学科小川猛志先生が指導する情報ネットワーク研究室では、「コンピュータネットワーク技術、情報通信、社会基盤」について先達が積み上げたインターネットや電話網の通信技術を吸収し、IoT,M2M,SDN,OpenFlow,Big Data、など最新の技術を研究しています。さらに最近では社会実装を見据えて、ユーザーが身近に使える技術、例えば、P2Pによる通信量の負担を分散するデータ伝送、LPWANを利用した新たなネットワーク、分散だけではなくより実社会に適合した集中管理要素を含めたBlock Chain技術など多岐にわたる研究を行っています。
 ここでは、「LPWANを利用した新たなネットワーク」についてご説明します。
この技術は、以下のPCT出願を行っており、国際調査報告では主要な請求項が特許性を有する旨の見解を得ています。

 国際出願番号 PCT/JP2018/033634  
 発明名称   データ転送システム及びデータ転送方法
 国際出願日  2018年 9月11日

LPWAN(ロー・パワー・ワイド・エリア・ネットワーク)は、通信速度毎秒100ビットから1メガビットと、現在主流の通信規格LTEの1000分の1以下と通信容量は小さいが、低消費電力で低価格を実現するIoT通信です。LPWANは位置情報やメータの検針といった小さなデータを送信することに最適な通信となります。
また、LPWANは、極めて低電力にもかかわらず、10km以上の長距離通信が可能というメリットも有しています。
最近、LPWANを世界的に展開しているSigfoxやLoRaWANでは、通信容量が小さいデータ送信の特徴を活かしつつ、必要に応じて大きなデータ送信も可能なシステムを構築することに注力しています。これは、例えば異常を検出したときの詳細なデータ解析や、ビッグデータとして活用するためのデータ蓄積等が求められているからだと思います。
この課題を解決すべく、各社は高性能なスマートフォン端末を通信の中継点とするマルチホップ通信網を構築するような手段を開発しています(例えば、US2018/0035313 SIGFOX Wireless Communication Between An Access Network And A Terminal In Range Of A Plurality Of Base Stations Of Half-Duplex Type Of Said Access Network)。
しかし、都合良くスマートフォン端末等が中継点となる位置にあるとは限りません。この問題を解決するのが小川猛志先生のLPWAN技術です。この技術は、センサや検針装置からクラウドにLPWANを通じてデータ回収を要求すると、クラウドが当該IoTマシンの近くを移動中一般ユーザのスマートフォン端末等にデータ回収を委託し、当該端末からそのデータを必要とするサーバにデータを移送するものです。

何が違うのか?この方式では、極めて厳しい通信環境、例えば、・インフラが無い・設置できない・設置されていない・Multihopができない・危険である・衛星通信も断絶する・通信状況が悪いであっても、使うことができます。
例えは悪いですが、通信環境が悪ければ、人や車両などの移動する実体を橋渡しとして利用するという画期的なアイデアです。
先述した極めて厳しい通信環境であっても、・異常がないか監視したい・定期的に詳細データを回収したい・非常時にはエピデミック通信を確立したい(アラート及び詳細)・詳細データ(アプリ更新等)を届けたい、等の要求は必ずあります。
この要求を実現させることは大きな社会貢献につながると考えます。

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