ライフサイエンス 外科手術における究極の課題を解決!

ココがポイント

外科手術における究極の課題を解決!
~ウォーターパルスジェットメスで腫瘍切除と機能(細血管・神経)温存の両立を実現~

シーズの概要

研究目的及び背景

腫瘍等最大限の病変摘出は生命予後の改善に、細血管や神経の機能温存は術後の生活の質に大きく影響を及ぼすことから、手術用治療器ではこの二つの要素の両立が望ましい。その一方で、既存の手術用治療器はこの二つの要素の両立は必ずしも容易ではない。このため腫瘍切除と機能温存の両立ができる手術用治療器ウォーターパルスジェットメスを開発し、さらなる応用展開に向けた開発を進めている。

技術の概要

水の吸収性の高い中赤外線領域の波長をもつHolmium:YAGレーザーを細管内でパルス照射することによって、微小液体の高速パルス流を生成する。システム構成を図1に、ハンドピースを図2に示す。ハンドピースは内径1mmのステンレス管に直径0.3mmの小孔を設けている。ステンレス細管に挿入された光ファイバーに予め設定した周波数に基づきパルスレーザーを印加すると、その近傍の液体が瞬間的に沸騰して気化し、その気体膨脹作用により微小バブルを含んだ約10μℓの微量の液体を高速かつ間欠的に射出(図3)。そのジェット液と腫瘍組織の衝突による物理作用で腫瘍破砕が生じる。ジェット液射出時にステンレス管の小孔近傍ではコアンダ効果から負圧になるため、外環境の周囲から小孔を通してジェット液に微小の空気が吸い込まれる。微小バブルの混入によりパルスジェットの破砕力は、小孔を設けない場合と比較して最大3倍向上した。また、ステンレス管の先端に対して小孔の位置を変える(図4)ことにより、射出するジェット液の初速が変化し、ジェットの生体組織の破砕力が制御できる。このバブル型ウォーターパルスジェットメスの様々な外科領域での適用を目指して研究開発を進めている。

図1

図2

図3

図4

想定される用途

◆形成外科領域脂肪組織に対して微小血管や神経を温存しながら効率的に破砕
◆内視鏡手術システムや手術ロボットシステムへの統合

従来技術より優れている点

◆国内8ヶ所(東北大、広南病院他)で下垂体腫瘍治療100症例実施
◆腫瘍切除と機能温存(0.2mmの動脈温存を確認)の両立を実現
◆微小バブルの混入により破砕力が最大3倍に向上
◆グリップアダプタ付ハンドピースの開発により使用感を向上

【特許情報】
◆ 出願名称:液体噴射装置
出願番号:特願2017-081692

関連コンテンツ