「平面度」は重要な幾何学量の一つです。近年、フォトマスクやシリコンウエハ、液晶基板、光学素子、工業用平面基準器(オプティカルフラット)など高精度な平面が要求されています。この微分干渉計は、「平面度測定」において、これまでできなかった半径方向微分をリアルタイムで観測でき、精度はもとより、生産性を極めて向上させるほどのポテンシャルを秘めています。
半導体やフラットパネルディスプレー用露光装置のマスク基板や反射鏡などには、高精度な平面が要求され、その性能を左右する重要な基盤技術となっています。また、シリコンウエハーの平坦度測定装置などでは、ナノメートルレベルの凹凸を測定する装置が必要となります。【ナノメートル(nm):国際単位系の長さの単位で、10−9メートル (m) = 10億分の1メートル、すなわち100万分の1ミリ】このように表面形状の計測技術は、現代の産業基盤を支える技術です。
表面形状の観測技術の一つとして干渉計測があります。
干渉計は、物体の位置や姿勢、更には物体までの距離などの測定などの他に、表面の粗さや平面形状の計測、微生物等の観察にも広く使用されています。また、微分干渉計による計測や観察に際しては、対物レンズの半径方向に沿ってシアする手法、つまり、平行に横ずれさせた2つの光を用いた手法による光学系が知られています。
これまでの技術は、収束あるいは拡散している光の波面を分割し干渉信号を生成し、対物レンズの半径方向に沿って光を分けた差分干渉計を実現しています。
また、フィゾー干渉計に代表される平面形状を測定する手法があります。しかし、このフィゾー干渉計では、測定対象とは別に形状が既知の参照面が必要となり、この参照面の形状が未知であると、測定対象の形状を決定できないという課題がありました。この課題を解決するため、「3枚合わせ法」という特殊な技術を用いていました。
しかし、今までの光学系では、対物レンズの半径に比例してシア量が変化するため、位置によってシア量が異なる結果として、半径が大きくなった場合、2つの光が大きく離れた距離の間での差分となり、得られる干渉信号の密度が粗になる等、被測定物の表面の凹凸の解釈が困難になる欠点がありました。
提案技術は、凸型アキシコンレンズと凹型アキシコンレンズとを、凸部と凹部とが対向するように所定の間隔を空けて配した微分干渉計です。【円錐(アキシコン)レンズは回転対称プリズムとも呼ばれ、片面が円錐状でもう片面が平面になっています。】
この干渉計は、測定対象の形状の半径方向微分を等密度で直接観察できます。
また、レンズ間の間隔を変化させることで計測精度を変更することができます。
シア量が半径にかかわらず一定になることで、参照面を必要とせず、半径方向微分をリアルタイムで観測することを可能としました。
このように、提案技術は、干渉信号の密度が一定であり、被測定物の表面における凹凸の解釈上の問題がないだけでなく、参照面を必要としない簡易で迅速な観測が可能な微分干渉計を提供いたします。
この発明は、シア量が従来技術のように対物レンズの半径により変化すること無く、干渉信号の密度が一定となり、被測定物の表面における凹凸の解釈上の問題が生じません。また、従来技術のような参照面を当然に必要としないため、1回の測定で計測や観察ができ、測定時間を短縮できるのに伴い、簡易で迅速な観測も可能となります。
提案技術を醸成することにより、将来的にはウェハの平面、レンズや透明材料(ガラス等)の平面、球面の形状測定に適用することができます。現代の技術は、現状の計測手法に対してAI等を適用した画像処理によって、精度等の向上を目指すものが多いですが、この提案技術は根本から計測手法を見直して、精度よく、かつ生産性・コスト低減を格段に向上させることができるものです。
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