2009.02.27
入学試験も山場を越え、本学ではC日程と工学部第二部を残すのみとなりました。今年の受験者数は、センター利用試験では好調でありましたが、一般入試では前年並みとなる見込みであります。受験者数の下げ止まり観はあるものの、卒業生の産業界からの評価を考えると、もっと受験生諸君に本学の魅力を知ってもらい、入試に挑戦してもらいたいと感じております。
さて、入学試験の時期になると、本学創立者の一人、廣田精一先生のお言葉をいつも思い出します。
「現代社会に試験制度は欠かせないであろうが、しかしそれは必要悪であることを自覚せよ。大事なことは試験制度を一人歩きさせてはいけないということだ。試験制度が一人歩きするようになれば、人が試験をつくるのではなく、試験が人を作るようになる。」
「入学試験を行おうとするようなことは最も人の自尊心を傷つけるものだ。及落だけでなく、自尊心が傷つけられることを注意するべきだ。」
先生は、学問修得を希望する者は、誰でも学習機会を与えられるべきで、入学試験はないのが理想であるという持論をお持ちでした。現在は入学定員が決められ、「入学は厳しく、卒業は易しい」状況ですが、これからは「入学は易しく、卒業は厳しい」時代がくるでしょう。教育の理想は廣田精一先生が100年前に言われた通りだと思います。平成24年に開設される新東京キャンパス(仮称)では、21世紀の知識基盤社会に向けた取組みを考えていく必要があると思っております。
今回は、2月23日(月)にタイのバンコクで行った講演の紹介とあわせ、研究の面白さについて話したいと思います。講演のタイトルはHuman Adaptive Mechatronics(HAM)でした。HAMは、昨年の3月までの5年間の東京電機大学のCOE(Centre of excellence)の研究プロジェクトのテーマでした。メカトロニクスという言葉は機械と電気の組み合わせで作られた『機械系』と定義される日本発の造語です。最近では、最も適した機能を実現する要素、それを組み合わせてできるシステムと考えられています。HAMとは更に操作する人の技能をも考慮したメカトロニクスです。この言葉は東京電機大学発の造語ですが、学会においても多く使われるようになり、世界で通用する東京電機大学発の造語と言えます。
COEの成果はいろいろありますが、一つの成果は宮脇富士夫教授のグループで開発された「器械出し看護ロボット」(Scrub Nurse Robot)と言い、外科手術をされる医師の支援をする看護士に代わるロボットです。次の面白い成果としてはカプセルロボットがあり、車のように外側に足もなければ車もないカプセルが、中にある錘を動かすことによってカプセルそのものを動かすものです。これは、その当時の博士研究員のリー博士、またロシア科学アカデミーのチェルノースコ教授との共同研究によって開発されてきました。
リー博士は現在、西安にある中国アカデミーの研究所の教授としてカプセルロボットの研究を続けておられます。
多くの成果が得られた研究においては、一人で行われた研究はほとんどありません。いろいろな研究者のアイディアの交換と、それによって生まれる協力によって研究が進められているのです。研究の面白いところとは、人の出会いとアイディアの結合によって結果が得られるということです。互いに協力し、勤勉であり研究を続けることによって、成果が得られます。私はこれまで多くの学生を指導してきましたが、指導というよりも、実は私と学生との共同研究によって成果が得られたと感じています。つまり学生が出すアイディアと私が出すアイディアの、お互いに良い部分を取り上げ、更に素晴らしいもの創っていくという努力し続けることにより成果を出せてきました。
本学の初代学長の丹羽保次郎先生も、研究者あるいは技術者として必要なことは勤勉と協調、最後に決断力と仰っています。私も全く同感であり、良い研究を行うためにはこの3つが必要不可欠と思っています。
今回、タイの学会の会場でも私が昔指導していた学生と再会しましたが、彼らはチュラロンコーン大学の教員や政府の研究所の副所長になっていました。彼らと会うと昔、お互いに協力して研究したことが思い出されます。同様に、前出のリー博士との再会も果たし、これまでの研究また現在の研究について情報交換を行い、今後の研究の方向をお互いに確認することができました。
このように、互いの協力によって研究を進められることが研究者あるいは技術者としての冥利に尽きると思っています。本日は研究を進めていくうえでいかに協調や努力が重要か、ということを述べました。
「あだち異業種フォーラム2009」(主催:あだち異業種連絡協議会)が、足立区役所庁舎ホールにて盛大に開催されました。当日は、足立区内、区外を問わず全79社の企業が参加。本学からは産官学交流センターを代表して3名(関口、松村、鈴木)が参加し、各企業の方々との懇親を深めました。
開会に先立ち実施された展示会ではあだちブランドを中心に、各企業(57社)の展示品が紹介されていました。また、ビジネス交流会では、79社の参加企業が8つのグループに分かれ、異業種企業の方々と名刺交換、企業PR、情報交換会等を行いました。グループ編成は合計3度組合せ変更行い、より多くの企業と情報交換が出来るように工夫されていました。交流会では、現在の社会情勢を踏まえ各企業が抱える課題を明らかにすることにより、互いに励ましあう姿がとても印象的でした。
初代学長故丹羽保次郎博士の功績を記念し、昭和52年より情報工学等の関連分野を広く含む電子通信工学関連分野において、独創的な研究に従事、かつ優秀な論文を発表した研究者に対して丹羽記念賞を授与しています。
平成14年度より丹羽保次郎博士の偉業を後世に伝え残す目的から、その名称を丹羽保次郎記念論文賞とし、今回で通算32回目を迎えました。当日の授賞式では、古田学長の挨拶のほか、3名の受賞者によるプレゼンテーションが行われました。
今年度の博士・修士論文発表会は、大学院生の研究成果の公表はもちろんのこと、学部在学生及び大学院生から大学院修了者までの相互交流及び連携の 強化を目的とし、工学研究科(修士)・情報環境学研究科(修士)・先端科学技術研究科(博士課程(後期))の3研究科合同発表会として実施しました。ま た、論文発表に先立ち小谷誠 本学名誉教授より、「脳科学を考慮した大学院時代の生き方」をテーマにした講演を頂きました。
風邪をひくと首に葱を巻いて寝かしつけられた(遠い)記憶があります。滋養強壮だけでなく殺菌効果も見込んだ使い方だったのでしょう。さて、プロが選ん だプロのためのプロの葱・市場には通常出回らない葱という、消費者心理を鷲づかみの葱が「千住葱」です。長く太い白色部分は甘みとコクに優れ、冬場の最盛 期の逸品はメロンの糖度をも上回るとの宣伝に、幼少時の苦い想いも消え去りました。
現在、都内には葱を食することを主目的とした飲食店も登場し、メインコースは千住葱の黒焼一本との紹介もありました。そんなレアモノの千住葱も、なんと ネット販売でお取り寄せが可能となったとのこと。葱焼酎「やっちゃば」(青物市場の意)と合わせて、伝統の味をご家庭にいかがでしょうか。
【編集後記】
◇明るいニュースが少ないなか、映画「おくりびと」「つみきのいえ」がアカデミー賞を受賞しました。派手ではなく、むしろローカライズされた映画ですが、日本人独特の世界観を通して表現された普遍的な感性が評価されたんだなあと感じました。
◇オリンピックのシンクロナイズドスイミングで有名な井村雅代コーチのインタビュー番組をテレビで見ました。それまでは「何やってんだ!」とプールサイドで選手を叱り飛ばす鬼コーチのイメージでしたが、その裏には、選手ひとり一人の性格を把握し、いかに才能を伸ばすか、いかに妥協せず演技を磨きぬくかを考え抜き、選手と一体になって目標に向かった一人の教育者の顔があり、とても感動的でした。
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