2021.04.01
開講学部 | 工学部/応用化学科 |
科目名 | ワークショップ |
担当教員 | 【応用化学科】 鈴木隆之・石丸臣一・小林大祐・夏目亮・保倉明子・宮坂誠・望月大・山本哲也・岩崎直也・木戸晶子 【自然科学系列】 佐藤真一・田中里美 |
本科目は、2年生の専門必修科目である。化学分野のものづくりの体験学習を通して、我々の生活と化学との関わりについて理解を深めることを目的にしている。受講者は、少人数のグループで1つのテーマに沿って、自主的に学習活動を行い、その成果をプレゼンテーションしたり、レポートにまとめて提出している。
従来の学習形態も単なる座学ではなく、ものづくりの実践であり、アクティブラーニングを取り入れていた。2020年度は、さらにPBLを導入することで、システマティックな学習成果の可視化を図るとともに、テーマごとに協力してものづくりの成果ポスターを作製し、従来よりも質の高いプレゼンテーションの実施を目的とする。
ガイダンスでテーマと概要を公開し、学生の希望調査を実施した上で、配属を決定した。それぞれの人数も併せて示す。
テーマ | 担当教員 | 人数 |
写真を化学する | 石丸臣一 | 9名 |
蒸留してみよう | 小林大祐 | 8名 |
温度により伸び縮みたしたりpHで色変化する高分子ゲルを作ろう | 鈴木隆之 | 9名 |
タンパク質を視る | 夏目亮 | 9名 |
植物を使って有用なメタルを回収しよう | 保倉明子 | 9名 |
光プラスチックをつくってみよう | 宮坂誠・木戸晶子 | 9名 |
水素を作って「燃料電池」で発電しよう | 望月大 | 9名 |
医薬品を合成してみよう | 山本哲也 | 9名 |
身のまわりのモノを化学する | 岩崎直也 | 7名 |
コーラの分析 | 佐藤真一・田中里美 | 7名 |
【授業の様子】
2020年度は、感染拡大防止策をとりながら、ハイブリッド型で実施した。具体的には、対面の人数を減らした分散型あるいは遠隔(zoomオンライン)との併用など、各テーマで工夫しての実施となった。
【成果発表】
テーマごとにポスターを制作した。一例を紹介する。
評価項目は以下の通りとした。
(1)ものづくりへの取り組み方(40%)
(2)実験テーマの理解度(レポート)(40%)
(3)実験結果のプレゼンテーション(20%)
学習成果を可視化するために、各テーマで学習するキーワードを6つ選出し、学習前と後で、これらキーワードに対する理解度チェックを行った。
一例として、「光るプラスチックをつくってみよう」のキーワードに対する学習前後の比較を示す。キーワードに対する理解度(自己評価)の回答人数を横軸に示している。
このように、学習前には「はじめて聞いた」「聞いたことがある」程度であったものの、学習後にはキーワードを「理解している」「説明できる」と回答した学生が増加していることがわかる。また回答項目を「はじめて聞いた: 1点」「聞いたことがある: 2点」「なんとなく知っている: 3点」「理解している: 4点」「説明できる: 5点」とスコア化し、履修者の平均点として6つのキーワードの得点をまとめた。一例を下記に示す。履修者のキーワードごとの学習成果を比較することができる。
ワークショップに参加した感想(実習を振り返り、努力した点、努力が足りなかった点、さらに深く学習したい点など)の一部を紹介する。
・写真について化学的な理解度が深まった。
・久しぶりに学校で実験することができて嬉しかった。ゲルを作りながら今まで知らなかった語句について理解することに努めた。色の付き方でπ共役の原理を学んだ。今まで知識だけだったものが実際に体験することができさらに理解が深まった。
・吸光度測定を用いた実験は何回かやったことがあったが、パソコンを使っての構造解析は初めてだったのでとても新鮮だった。
・事前に分析方法を学習したので実習中も理解しやすかった。金ナノ粒子の生成方法は理解したが、使い道についてはあまり触れなかったので、触媒での活用方法などナノ粒子の特性について学習していきたい。
・半年近く実験をしていなかったため、実際に大学へ足を運んで実験をするというのはいい経験になったと感じた。今回の実験では最終的に有機ELを発光させることはできなかったが、実際に研究をするときには学生実験とは異なり失敗することもあるため、今回の体験を通して失敗の原因などについてより深く理解できるようにしたいと思った。
・普段行う実験より専門的な分野の実験ということもあり、実験結果の解析などに苦労したが、グループで発表資料を作っていく中で理解を深めることができた。白金の代替品を考え、それを使用した電極との比較をしてみたいと思った。また、燃料電池だけではなく、他の電池の評価方法も学習してみたいと思った。
これらの感想から、身近なものづくりの体験つまり学生が自らの手を動かして考えながら実験をすることで、対面ならではの学習効果があったと考えられる。失敗したり苦労したりするのも、ものづくりには必要な経験であり、オンラインでは得難いものである。本取り組みが「創る学び」「深い学び」に結びつき、狙い通りの効果が得られたといえる。
PBL教育支援プログラムとして採択され、ものづくり「創る学び」のシステマティックな学習成果の可視化および質の高いプレゼンテーションが実施された。テーマごとに学習するキーワードを挙げることで、座学での学習内容と実習が結びついた。学習効果の可視化が実現し、従来よりも理解が深化した。グループ間の情報共有もできた。
今後は、可視化された学習成果をもとに、学習計画を策定することができる。PDCAサイクルにより、より高次元の「創る学び」が期待される。
第1回 ガイダンス
第2回 グループ分け決定、各教員による指示
第3回~第13回 グループ別実験、実習(対面で実施する場合には、3~4名程度の少人数に分散して実施)
第14回 成果発表
〇PBLを主体とした教育への取組みに対する支援(PBL教育支援プログラム学内公募)
東京電機大学教育改善推進室では、平成23年度から「学生が主体となって学ぶ」形式を取り入れた、いわゆる「PBL(Problem-Based Learning又はProject-Based Learning)」による教育の開発・運営を「PBL教育支援プログラム」として支援し推進しています。
PBL教育支援プログラムは、これからPBLを取り入れていこうと考えている教員やすでに実践しているPBLをさらに工夫しようと考えている科目を対象に支援を行い、その実践と成果を学内の関係者と共有し、学生の学びを主体とした教育の推進を図ることを目的としています。