令和元年度 PBL教育支援プログラム 成果報告書「コンピュータプログラミングⅡ」

2020.04.01

開講学部 工学部/電気電子工学科
科目名 コンピュータプログラミングⅡ
担当教員 吉田 俊哉

Q1 PBLを導入した意図・目的

プログラミングには言語の文法やルールはもちろん、全体の目的を理解し、これを達成するために問題を細分化し、個々の問題の解決策を考え、全体を組み立てていく能力が必要である。この能力は多くの業務で必要なジェネリックスキルで、これを身に付けるために近年プログラミング教育が注目されている。プログラミング実習で効果を高めるためには「課題をこなす」という学生の姿勢を「何とかして問題を解決したい」と言うような積極的なものに変える必要があると考えた。自発的な問題提起からスタートさせ「課題をタイムリーにすること」を科目設計の核とした。このために、わかりやすい課題ではあるが解決策が容易には纏められない課題を題材とし、グループワークで汗をかきながら解決策を探っていく形態が最も効果的であると考えPBLを導入した。

Q2 授業におけるPBLの実践方法

1グループ3名のグループワークで7つの課題をこなす。1課題は2週で実施し、課題ごとにグループは再編成する。1週目は課題に対してどうアプローチをして攻略していくかの作戦会議が主となる。2週目は解決方法を文章でまとめながらプログラムを完成させる。これに対し課題は例えば「入力された68桁までの整数を命数法(万、億、・・・那由多、不可思議、無量大数)で漢字表記せよ」といったもの。日本語ネイティブであれば誰でもできる作業であるが改めてルールを考えると難しく、第三者(対人間)に説明することが容易ではない課題としている。PCは「曖昧なことを理解しない第三者」という認識でルール作りをしてもらう。TA2名、SA4名、SAアルバイト(PBL支援)4名を配置したが、本年度、昨年度共に履修者は56名でサポート側の人員が過剰気味であった。

Q3 授業における成績評価方法

評価項目は以下の3つ
(a) 課題を理解し、処理手順やアルゴリズムを定められる
(b) プログラム設計に従ってプログラムできる
(c) テスト計画/テスト設計を意識し、テストケースを設定してプログラムのチェックができる
これらの項目をルーブリックで評価する。欠席は2回までとし、項目ごとの評価の平均が基準値を上回っていることが単位認定の最低基準としている。最終評点は各項目を点数化して100点満点としている。(b)は実習中にプログラムを実行してもらいTA SAが採点する。(a)と(c)はグループでまとめて文章で提出する。別途提出したプログラムリストと合わせて担当教員が後に採点する。

Q4 学習成果の可視化の取組み

文章で提出してもらった(a)、 (c)をプログラムリストと合わせて採点しコメントを入れて学生に返却(4日以内にpdf化してメールで送付)している。学生は各評価項目の点数(A、 B、 C、 D評価)とコメントから何が足りなかったかを把握できる。返却は次の課題に取り組む以前に行っており、次回に生かすことができる。

Q5 PBLを発展させるための課題

履修者は殆ど全員が休まず課題をこなし、休みがちだった1名を除き単位を取得することができた。本科目は選択であるが、必修である前段科目で苦手意識を持った学生が本科目を敬遠した可能性があり、昨年同様、履修者が選別されていた可能性がある。改善の余地があることは無論だが、ほぼ全員が課題に積極的に取り組んでいた授業中の様子と、ほぼ全員が単位修得にまで至った事実から、有効な教育方法であると考えている。本年度はコミュニケーションが特に不得意な学生がおり当初心配をしたが、グループを共にした学生たち全員の理解とサポートが授業中に見て取れ、今回は問題が表出しなかった。多様性を学生に教育する効果があったと思う反面、トラブルに発展しても不思議ではない状況でもあった。特別対応するなど事前のトラブル回避は実施側からすれば安心だが、協働における多様性を教育する絶好のチャンスでもある。そのためある程度の冒険は必要と考える。事故回避のためにもノウハウの蓄積・共有は重要である。また協働である以上、他力でチームの評価が高まり、メンバー個人が過大評価される場合もある。アンケートからこれを許容できない学生の存在が確認されるが、毎回チーム編成を変えているためか数は僅かであった。ただし昨年に比べれば増えた印象で、評価方法の改善は要検討である。

Q6 授業の概要と進め方

評価方法:
・課題はチーム(3名程度)で取り組み、各個人の評価は基本同一とする(チーム内での貢献度が十分でない場合、その個人は不合格評価とする)。なおチーム編成は課題ごとに変更する。
・各課題を2週で取り組み、2週目に課題成果を提出する。
・各課題1週目を欠席した個人については評価を1ランク下げる。
・各課題2週目を欠席した個人については課題未提出となる。
・初回を除き欠席回数が3回以上の場合は放棄とみなす。
・各課題に対し評価基準でA、B、C、Dの評価を付し、それぞれ5、 4、 3、 0点とし、それらの合計点を最終評価点とする。課題は7つあり合計の最大は105点となるが、最終評定点は100点で飽和する。
・各達成目標に対応した評価項目全てにおいて、C以上の評価が4回以上になることが単位修得の必要条件となる。これを満たさない場合、最終評価点は59点(不合格)で飽和する。
・学力考査は行わない。
内容:
第1回 講義、実習の進め方とC言語に関する復習、課題1(1週目)(個人ワーク)
第2回 課題1(2週目)(グループワーク)
第3回 課題2(1週目)(グループワーク)
第4回 課題2(2週目)(グループワーク)
第5~14回は上記第3回と第4回の繰り返し。「課題をタイムリーにする」ために個々で予習をしてほしくない。そのためシラバスには各回の課題内容はあえて記していない。


〇PBLを主体とした教育への取組みに対する支援(PBL教育支援プログラム学内公募)

東京電機大学教育改善推進室では、平成23年度から「学生が主体となって学ぶ」形式を取り入れた、いわゆる「PBL(Problem-Based Learning又はProject-Based Learning)」による教育の開発・運営を「PBL教育支援プログラム」として支援し推進しています。
PBL教育支援プログラムは、これからPBLを取り入れていこうと考えている教員やすでに実践しているPBLをさらに工夫しようと考えている科目を対象に支援を行い、その実践と成果を学内の関係者と共有し、学生の学びを主体とした教育の推進を図ることを目的としています。