平成30年度 PBL教育支援プログラム 成果報告書「コンピュータプログラミングⅡ」

2019.04.01

開講学部 工学部/電気電子工学科
科目名 コンピュータプログラミングⅡ
担当教員 吉田 俊哉

Q1 PBLを導入した意図・目的

プログラミングには言語の文法やルールはもちろん、全体の目的を理解し、これを達成するために問題を細分化し、個々の問題の解決策を考え、全体を組み立てていく能力が必要である。この能力は多くの業務で必要なジェネリックスキルで、これを身に付けるために近年プログラミング教育が注目されている。プログラミング実習で効果を高めるためには「課題をこなす」という学生の姿勢を、「何とかして問題を解決したい」というような積極的な姿勢に変える必要があると考えた。自発的な問題提起からスタートさせ「課題をタイムリーにすること」を科目設計の核とした。このために、わかりやすい課題ではあるが解決策が容易には纏められない課題を題材とし、グループワークで汗をかきながら解決策を探っていく形態が最も効果的であると考えPBLを導入した。

Q2 授業におけるPBLの実践方法

1グループ3名のグループワークで7つの課題をこなす。1課題は2週で実施し、課題ごとにグループは再編成する。1週目は課題に対してどうアプローチをして攻略していくかの作戦会議が主となる。2週目は解決方法を文章でまとめながらプログラムを完成させる。2018年度の履修者を90名程度と見込んでいたが実際は56名だった。これに対しTA2名、SA4名、SAアルバイト4名を配置した。課題は例えば「入力された68桁までの整数を命数法(万、億、・・・那由多、不可思議、無量大数)で漢字表記せよ」といったもの。日本語ネイティブであれば誰でもできる作業であるが改めてルールを考えると難しく、第三者(対人間)に説明することが容易ではない課題を設定している。PCを「曖昧なことを理解しない第三者」という位置づけとして考えルール作りをしてもらう。

Q3 授業における成績評価方法

評価項目は以下の3つ
(1) 課題を理解し、処理手順やアルゴリズムを定められる
(2) プログラム設計に従ってプログラムできる
(3) テスト計画/テスト設計を意識し、テストケースを設定してプログラムのチェックができる
これらの項目をルーブリックで評価する。欠席は2回までとし、各項目ごとの評価の平均が基準値を上回っていることが単位認定の最低基準としている。最終評点は各項目を点数化して100点満点としている。(2)は実習中にプログラムを実行してもらいTA、 SAが採点する。(1)と(3)はグループでまとめて文章で提出する。別途提出したプログラムリストと合わせて担当教員が後に採点する。

Q4 学習成果の可視化の取組み

文章で提出してもらった(1)、 (3)をプログラムリストと合わせて採点しコメントを入れて学生に返却(pdf化してメールで返信)している。学生は各評価項目の点数(A、 B、 C、 D評価)とコメントから何が足りなかったかを把握できる。返却は次の課題に取り組む以前に行っており、次回に生かすことができる。また、授業の最後に本学定型の授業アンケートを実施しただけでなく、記述式のアンケートを別途WebClassで実施した。アンケート内容は
Q1. アクティブラーニングで実施したことについての感想
Q2. チームで実施したことについて
Q3. 身についた/成長したと実感できる事柄は?
とした。アンケートは教員側が情報を得る目的もあるが、学生自身が振り返ることでこの講義で何を学んで、今、何が足りないかを理解させることができる。これは今後の他の勉学においても効果があると考えている。

Q5 PBLを発展させるための課題

本科目は選択であり、必修であるコンピュータプログラミングIで苦手意識を持った学生が敬遠した可能性があり、履修者が選別されていた可能性がある。しかしながら今回は56名の履修者のうち病気と忌引で1名ずつ各1回欠席者が発生したのみで、全員が全課題をこなし全員が単位取得したことは特筆に値する。アンケートによると週当たりの時間外学習の平均は約3時間で、意欲的に取り組んだと回答する学生が殆どであった。また教員が熱心であったという評価も頂いた。継続・発展のためには、学生の意欲を高める課題づくりと教員の熱意の継続が必要である。学内、学科内および教員間の理解と学内の強力なサポート体制が不可欠と考える。

Q6 授業の概要と進め方

評価方法:
・課題はチーム(3名程度)で取り組み、各個人の評価は基本同一とする(チーム内での貢献度が十分でない場合、その個人は不合格評価とする)。なおチーム編成は課題ごとに変更する。
・各課題を2週で取り組み、2週目に課題成果を提出する。
・各課題1週目を欠席した個人については評価を1ランク下げる。
・各課題2週目を欠席した個人については課題未提出となる。
・初回を除き欠席回数が3回以上の場合は放棄とみなす。
・各課題に対し評価基準でA、B、C、Dの評価を付し、それぞれ5、 4、 3、 0点とし、それらの合計点を最終評価点とする。課題は7つあり合計の最大は105点となるが、最終評定点は100点で飽和する。
・各達成目標に対応した評価項目全てにおいて、C以上の評価が4回以上になることが単位修得の必要条件となる。これを満たさない場合、最終評価点は59点(不合格)で飽和する。
・学力考査は行わない。
内容:
第1回 講義、実習の進め方とC言語に関する復習、課題1(1週目)(個人ワーク)
第2回 課題1(2週目)(グループワーク)
第3回 課題2(1週目)(グループワーク)
第4回 課題2(2週目)(グループワーク)
第5~14回は上記第3回と第4回の繰り返し。
「課題をタイムリーにする」ために個々で予習をしてほしくない。そのためシラバスには各回の課題内容はあえて記していない。


〇PBLを主体とした教育への取組みに対する支援(PBL教育支援プログラム学内公募)

東京電機大学教育改善推進室では、平成23年度から「学生が主体となって学ぶ」形式を取り入れた、いわゆる「PBL(Problem-Based Learning又はProject-Based Learning)」による教育の開発・運営を「PBL教育支援プログラム」として支援し推進しています。
PBL教育支援プログラムは、これからPBLを取り入れていこうと考えている教員やすでに実践しているPBLをさらに工夫しようと考えている科目を対象に支援を行い、その実践と成果を学内の関係者と共有し、学生の学びを主体とした教育の推進を図ることを目的としています。