平成28年度 PBL教育支援プログラム 成果報告書「年次横断型プロジェクト」

2017.07.13

開講学部 情報環境学部 情報環境学科
科目名 年次横断型プロジェクト
担当教員 鶴田 節夫

Q1 PBLを導入した意図・目的

これ迄、研究室のIT課題を選択、PM(プロジェクト管理)専門家を中心に課題達成をフォローした。しかし、ITは未成熟技術で計画見直しが多く、技術内容まで含めると一般に成功率は3割と言われる。我々のIT開発のPBLでも課題達成に関し、技術内容希薄で終わる場合が多々あった。IT開発はSEに重要だが困難なPBLの課題である。IT(情報技術)専門家を重視したプロジェクト管理を試みることにより、IT開発、それも、研究レベルの試行錯誤を必要とするものの成功体験を能力に応じ習得させることに挑戦した。

Q2 授業におけるPBLの実践方法

1.研究室のIT課題(CA、GA、分散)を資質を考慮して切出し提示、1つ選択してもらう。これにより、PBLメンバ8名を3グループに分ける
2.IT専門家が開発・評価・文書化を授業支援
  PM資格者が計画作成・進捗管理を授業支援
3.成果発表
導入と計画、中間・期末の進捗管理はPM資格者の授業支援を活用してエクセル表で見える化を行った。これとは別に、IT内容の中間・最終発表を行った。つまり、具体的な情報技術内容をPPTで発表してもらい、ITの詳細まで情報共有し指導する授業にした。

Q3 授業における成績評価方法

プログラムやシステムなど物作りだけでなく、例えば、後述の統計的音質変換方式などの方式提案とそれに伴う問題発見、さらには、既開発部分の実験・検証だけでも成果として評価した。

Q4 学習成果の可視化の取組み

1.PM資格者のエクセル表での計画・進捗の可視化管理と、IT専門家らのPPTでの具体的技術内容の可視化・発表指導の両方で、具体的なIT習得内容を含む徹底した可視化・共有・振返りを実現した。
2.学生はITの(PBL/IT専門家やグループ仲間との情報共有による)難問解決力・データ収集(方式企画力、実行)力を習得した。これらの習得は、例えば、方式提案・検証など目標を限定した問題の切出しと試行錯誤による問題修正と達成度可視化の取組みにより、可能とした。
3.取組の具体例
①SPTKを使い専門家の声を学習する当初計画はカウンセラーの口調と違い、共感など感情がこもらず変換音質が悪かった。
②共感的感情のこもった音質を統計学習するため、IT専門家の助言でGMM(ガウス混合モデル)を活用した統計的音質変換方式を採用する計画に変更。
③試作・評価時にバージョン不一致・統計データ量不足など問題多発、IT専門家を中心に再度計画見直した。
④統計的音質変換方式は提案で留まったが、理論の理解、問題発見、方式の開発体験ができPBL成果となった。

Q5 PBLを発展させるための課題

【反省点・課題】
1.具体的技術内容の振返りは、 学生・IT専門家双方に過負荷。
例えば、IT専門家の一人は訪問5回、メール15回以上で助言・討議し、学生・IT専門家双方が100時間以上の工数をかけた。それでも、問題発見、方式提案に留まる場合があった。
2.課題によっては、具体方式提案で留まる。
熟練カウンセラーの音声データの量・質の不足などの新たな問題を発見。このデータ取得工数の初期見積りが不十分であった。このように、方式提案・問題発見に留まる等、物作り全体から見ると完成度差が出た。

【今後に向けて】
1.振返り負荷軽減のため、可視性のよい研究メモのテンプレートを作り、研究メモと可視化を直結させる。
2.物作り以外に開発・検証方式の提案やその問題発見だけでも課題によっては、物づくりと同等に評価する必要がある。

Q6 授業の概要と進め方

1)各人が希望と資質を考慮して、研究室のプロジェクトテーマを選択、2)その一部を切出し課題とし、3)下記に従ってその解決を図る。
【PM専門家の支援によるPBL講義・ワークショップ】
第1回:計画作成
チーム形成、チーム活動目標確認、実施計画書仮作成
第2回:計画詳細化
活動項目詳細化、実施計画(見える化)ワーク
第3回:進捗フォロー
進捗見える化、計画見直しワーク
第4回:振返り
ドキュメントの整理・保存、計画、実施に対する振返り
【IT専門家の支援による学生へのIT習得支援】
•カウンセラーに似た音声出力にむけGMM(ガウス混合モデル)学習利用の統計的音質変換方法を提示。その理論・手順、 プログラム(Python)の調査を支援。
•プログラムなどの追加・変更箇所、開発手順・開発量見積り方法を助言
•音質変換機能全体の実装、テスト、調整の方法を助言。


〇PBLを主体とした教育への取組みに対する支援(PBL教育支援プログラム学内公募)

東京電機大学教育改善推進室では、平成23年度から「学生が主体となって学ぶ」形式を取り入れた、いわゆる「PBL(Problem-Based Learning又はProject-Based Learning)」による教育の開発・運営を「PBL教育支援プログラム」として支援し推進しています。
PBL教育支援プログラムは、これからPBLを取り入れていこうと考えている教員やすでに実践しているPBLをさらに工夫しようと考えている科目を対象に支援を行い、その実践と成果を学内の関係者と共有し、学生の学びを主体とした教育の推進を図ることを目的としています。