平成27年度 PBL教育支援プログラム 成果報告書「ITコミュニケーションと社会」

2017.01.31

科目名 ITコミュニケーションと社会
担当教員 木村 敦

Q1 PBLを導入した意図・目的

「ITとコミュニケーション、社会の関わり」という複雑かつ現在進行形で変化を続ける事象を客観的・多面的に捉える力を身につけるためには, 他律的学習環境に加えて自分や小集団で積極的に調べ, 体験し, 整理し, 伝える自律的学習機会が不可欠である。 そこで, 本科目では平成23年度の開講以来, 講義に加えてPBL (problem-based learning) 型の演習をあわせて実施し, 授業関連テーマについて班で調査し発表するというプログラムを導入している。
講義と演習の両方を1つの授業内で実施するハイブリッド型PBLを行うことで, 当該科目の「基礎的知識」+「人に語れる自分だけの武器」を身につけることを目標としている。 
とくに本科目は第7セメスター (4年次) 推奨であることから, これまで様々な講義・実習で修得した知識や技術を活用して現実社会の問題発見・問題解決に取り組むことができる。 そのため本科目でのPBL実践はカリキュラム計画としても適切であり, 他授業科目との相乗的学習効果が見込める。

Q2 授業におけるPBLの実践方法

受講生で3名の班をつくり, 各班に割当てられたテーマ (科目内容に関わる学生・教員提案型テーマ) について授業時間内外で準備し, 授業で発表を行う。 各班プレゼンは30分 (発表20分, 質疑応答10分), および教員質疑に対する応答プレゼンを次回発表日に10分で実施する。
班活動について, 初対面同士の班で円滑にコミュニケーションをとるための「アイスブレイク」や「ファシリテーション」, 班で計画的に準備を進めるための「貢献度相互評価」「他班との企画検討会」(図1), 発表水準を高めるための「評価基準の公開」「公聴会形式での成果発表会の実施」(図2), 聴講者が各発表を真面目に聴き議論に参加するための「発表予告プレゼン」「発表資料事前配布」「記名式相互評価」「質疑評価」, 人前での発表に慣れるための「学生司会」など, PBL活動を円滑・効果的に進める環境整備に取り組んだ。
H27年度は受講生が例年より少なく班数が少なかったので (例年は12班→H27は5班), 成果発表に費やせる時間が長くなった。 これにより発表・質疑討論とも時間に追われることが少なく, 内容に集中できたと感じている。

図1 他班との企画検討会の様子 図1 他班との企画検討会の様子

図2 成果発表会の様子 図2 成果発表会の様子

Q3 授業における成績評価方法

成績評価は講義35%, PBL65%とした。 PBL評価65%の内訳を以下に示す。
・発表評価25% (教員評価15%, 学生評価10%。 班内貢献度で評点を調整)
・学生評価参加10%
・期末レポート15%
・企画書等提出物10%
・成果発表会内容小テスト (問題作成・解答) 5%
・欠席は4点減点/回 (遅刻は2点減点/回)

Q4 学習成果の可視化の取組み

PBLの自主学修内容をまとめたレポートを提出させる際に, 問題解決プロセス・内容を表紙に簡潔に記載させるテンプレートを作成した。 これにより自主学修成果を意識的に明文化することを促した。 また, レポート評価においては, 内容・表現等の細目ごとに点数を表示することで, PBLを通じての学修評価を可視化した。
学期末に実施しているPBL振り返り調査により, PBL活動プロセスおよび成果について自己評価させた。
成果発表予告プレゼンおよび成果発表では聴講学生が発表学生の内容やプレゼン力について評価およびコメントを記入することとしている。 これにより学習内容やプレゼンについて第三者から複数回評価が得られるようにした。

Q5 PBLを発展させるための課題

今期は結果的に少規模クラス (15名) で実施できたことから, 例年よりも成果発表会の充実に時間を費やすことができた。 その結果, 学生質問数も増加し, また教員質疑に対する応答もその場しのぎの回答が減ったこと等により全体的に質疑討論のレベルが向上したといえる。 一方で, 講義科目であり受講者数制限を行うことは難しいことから, 今後, 中規模・大規模クラスとなった場合にも質の高い成果発表や討論の場を継続できるよう工夫してゆく必要があろう。
たとえば, ICTを活用して授業時間外にも質疑・コメントを教員・受講生間でやりとりできる仕組みをつくることで, 論点や根拠がより整理された討論を行ったり, 討論の質を評価すること可能となるのではないか。

Q6 授業の概要と進め方

01. 授業ガイダンス: 授業の目的・授業計画・評価方法を周知した。
02. テーマ設定および班決め, アイスブレイク: 事前募集した学生提案テーマおよび教員提案テーマを挙げ, テーマごとに希望者の班をつくった。 班は3名とし, 希望者が多い場合は抽選とした。 班内でアイスブレイクを行い, 円滑にコミュニケーションをとれる雰囲気づくりを行った。
03. 協働自律学習: 班ごとに, テーマについての概要把握, 問題発見, 問題解決提案に至る協働自律学習を行わせた。 とくに授業時間外での学習比率が高いため, 計画と役割分担を明確化させた。
04-07. 講義: 匿名性という性質例に, インターネット上の社会的・反社会的行動の例とメカニズムを概説した。 この講義により, CMCの性質に良い面・悪い面の両側面がありえることを論じ, PBL活動での多視点的な現象・問題俯瞰が必要であることを意識づけた。 この間PBLは主として授業外に進める必要があるが, 第5週には他班との企画検討会を行い, 進捗状況の確認および意見交換を行った。
08. 中間期学力考査の実施・返却
09-10. 協働自律学習: 発表に向けて学習内容の整理および発表予告プレゼンを各班5分で実施した。
11-14. 成果発表: 各班30分で成果を発表した。 司会進行や質疑応答, 発表評価を学生主体で実施した。 また, 発表当日中に教員による講評と質疑内容をLMSに公開し, 次回発表日に教員質疑に対する応答プレゼンを10分で実施した。 さらに, 全班の発表終了後に, 各班の発表内容に関わる知識を問う小テストを実施し, 理解度を考査した。
15. PBL演習レポート提出・返却: PBL活動で各人が調査した内容をまとめたレポートの提出および評価・返却を行った。

〇PBLを主体とした教育への取組みに対する支援(PBL教育支援プログラム学内公募)

東京電機大学教育改善推進室では、平成23年度から「学生が主体となって学ぶ」形式を取り入れた、いわゆる「PBL(Problem-Based Learning又はProject-Based Learning)」による教育の開発・運営を「PBL教育支援プログラム」として支援し推進しています。
PBL教育支援プログラムは、これからPBLを取り入れていこうと考えている教員やすでに実践しているPBLをさらに工夫しようと考えている科目を対象に支援を行い、その実践と成果を学内の関係者と共有し、学生の学びを主体とした教育の推進を図ることを目的としています。