第9号「日舞とセキュリティ」

2017.02.20

 1月下旬、私が会長をしている「一般社団法人日本スマートフォンセキュリティ協会(JSSEC)」の新年賀詞交歓会の催しで、久しぶりに日本舞踊を鑑賞しました。

 舞い手は坂東彦祥三様で、演目は「獅子の乱曲」でありました。文殊菩薩の浄土であると言われる清涼山に住む獅子の、力強く勇ましい姿を描く踊りでした。獲物を狙う澄み切った静の姿、次の瞬間全身の力で飛びかかる動の姿、「微動だにしない静」と「しなやかな動」とが、瞬時に切り替わる美しさを満喫しました。完成された日舞は本当に美しく、逆に未完なものは美しく見えません。このことは、すべて
のことに通じるのではないでしょうか。

 セキュリティと日舞という取り合わせは不思議かもしれませんが、私たちはセキュリティにも美しさを求めていることを主張したいのです。最近サイバー攻撃が激化しています。インターネットが高速化し、利便性が上がるほど、攻撃は先鋭化してきます。優れた攻撃者は、智慧の粋を尽くした攻撃を行い、技術としては感動を伴うほど美しく見える場合があります。これに対して防御はどうでしょうか。残念ながら攻撃側の智慧に負けて、後手後手の対策となっており、オロオロしているその姿は醜くもあります。

 コンピュータは論理機械です。完成された論理が美的であることは、数学の定理が美しいことからも明らかです。最近、コンピュータの論理に忠実なサイバー攻撃防御技術の研究が進められており、美を伴うセキュリティ技術が生まれようとしています。日本美を持つ独自サイバー攻撃防御技術の登場を、心から期待しています。

「獅子の乱曲」踊り手 坂東彦祥三様と 「獅子の乱曲」踊り手 坂東彦祥三様と

☆☆☆学長メッセージ 第9号(2017.2.20)☆☆☆
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